DOOS2007年2月号

 先月選考会が行われた第136回の直木賞は残念ながら該当なしでした。書店員としては非常に悲しい結果になりました。例年のお祭りが中止になったとでもいいましょうか、一時途方にくれていましたが、私たちには本屋大賞がありました。そのノミネート作品がこのほど発表されました。
  「一瞬の風になれ」   佐藤多佳子 講談社
  「失われた町」     三崎亜記 集英社
  「陰日向に咲く」    劇団ひとり 幻冬舎
  「風が強く吹いている」 三浦しをん 新潮社
  「鴨川ホルモー」    万城目学 産業編集センター
  「終末のフール」    伊坂幸太郎 集英社
  「図書館戦争」     有川浩 メディアワークス
  「名もなき毒」     宮部みゆき 幻冬舎
  「ミーナの行進」    小川洋子 中央公論新社
  「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦 角川書店
 いずれも2006年で注目を集めた作品ばかりです。どれが受賞してもおかしくありません。4月5日の結果発表まで楽しみです。今月紹介するのはこの本屋大賞に毎回ノミネートされる常連作家の伊坂幸太郎の最新刊「フィッシュストーリー」です。ちなみに第1回は「アヒルと鴨のコインロッカー」(東京創元社)が、第2回は「チルドレン」(講談社)昨年の第3回は「死神の精度」(文芸春秋)と「魔王」(講談社)、そして今回「終末フール」(集英社)と、毎回あと1歩のところで受賞を逃していますが、全国書店員から絶大なる支持をされている人気者であり、さらに直木賞候補に5回も上げられる実力の持ち主。ここまでの作家を読んだことがないといったら、もう時代遅れと言われるでしょう。彼の作品の魅力はいつも薀蓄を含むウィットに富んだ会話文とオフビートで凝りに凝った構成で楽しませてくれます。この新刊のキーワードは「フィッシュストーリー」。この言葉からあなたは何を連想しますか。直訳するとただの「お魚話」を彼はものの見事に料理し、4つの不思議な物語に仕上げています。それぞれの短編がぜんぜん関係ないようでいて、実は結びついていたり、実際ありそうでないような微妙な感覚を味わます。最初の「動物のエンジン」は、動物園の狼の檻の前で寝る謎の男の話で、続く「サクリファイス」は行方不明の男を追う探偵がふと迷い込んだ仙台の山奥の村の話。「フィッシュストーリー」という「僕の孤独が魚だとしたら」という一節で始まる小説を引用したり、その名の楽曲を、解散する最後の曲のタイトルにしたロックバンドが登場したり、書き下ろしの「ポテチ」ではちょっとおとぼけの空き巣たちの超ドンデン返しと、ただのお魚話と読んでしまったらとんでもないシッペ返しを食うことになる
でしょう。このなかでこんな文が出てきます。

「僕の孤独が魚だとしたら、あまりの巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出すに違いない」
人気実力ありながら、意外と読まれていない伊坂作品を未読でしたら、おすすめです。ただし、伊坂ワールドにハマッまたら、抜けられませんけどね。


フィッシュストーリー 新潮文庫

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