2015年 4月
新学期の小中学校の教科書の販売が解禁になりました。塾や一般でご利用の方、あるいは教員をめざす実習生皆様、お待たせしました。
4月は新しい出会いがあります。この時期になるとやたらと恋愛小説が読みたくなるのは私だけでしょうか。恋愛小説といってもケータイ小説のような純愛ものから「愛の流刑地」のようなドロドロな不倫ものまで、人の数だけ恋愛があるように恋愛小説もまた幅広く種類があります。個人的には恋愛といってもミステリーやファンタジーを軸にしたエンターテイメント色が強い小説が好きです。最近で言えば、乾くるみ「イニシエーションラブ」と松尾由美「雨恋」が忘れられません。
最初に出合い、そして惹かれ、最後に別れる(結ばれる)という恋愛小説の定石をこの2作品はいい意味で裏切ってくれています。しかも最後の最後で予想できないどんでん返しが待っています。そして、松尾由美「雨恋」の第2弾「9月の恋と出会うまで」でもあっと驚く結末のタイムトラベルラブストーリーとなっています。
主人公は「わたし」こと北村志織は旅行代理店に勤める27歳。引っ越した先で、エアコンの穴から話しかけてくる未来の隣人「シラノ」。壁の穴を通してちょうど1年未来の隣の部屋とつながています。現在の隣人平野と同一人物だという「シラノ」が頼んできたのは、過去の自分の尾行だったのです。現在の志織と未来の平野「シラノ」。真実なのかと疑いながらも声しか聞こえない相手にやがて惹かれていきます。こういった時を越えた魅惑的なモチーフの作品が実は映画にもあります。日本では岩井俊二監督「ラブレター」、韓国では「イルマーレ」、アメリカでは「オーロラの彼方へ」。その時間差を埋める手段が、手紙であったり、アマチュア無線であったりと様々ですが、共通して時間の壁によって隔てられいるため、直接会うことができません。そこには、未来にむかってお互いが同じ時間軸で逢いたいという望みに向けて物語が進んでいきます。非現実的でありながら、読者はきっとその恋が成就してほしいと願い、読みすすめることでしょう。しかし、松尾式ラブストーリーはそんな単純にはいきません。尾行の真相が明かされた志織は、未来の自分と現在の平野のためにある行動を起こします。それによって未来はどうなるのか。
オトコの切ない恋心を繊細に描き、最後にあっと驚く新展開が待っています。そしてエアコンの穴から始まったラブストリーがまるで手品のように鮮やかに結末を向かえます。ミステリーとしても、時間ファンタジーとしても、恋愛小説としても楽しめる極上ラブストリー。出会いがないのよと嘆くあなたに、小説の世界で素敵な恋愛をしてみませんか。
9月の恋と出会うまで 新潮文庫
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