DOOS連載 2006年11月号

 児童書を中心に出版するポプラ社が文学賞を作りました。今月、大賞1作と優秀賞2作が出版されました。
この新設されたポプラ社文学賞は、これまでの文学賞の常識を打ち破るものになりました。まず大賞賞金が2000万円という文学賞賞金史上最高額。あの新人登竜門の最高峰芥川賞でも賞金は100万円。また一般に文学賞の応募は文芸誌に掲載するのが普通ですが、書店でのポスター掲示や雑誌での告知と幅広い媒体を使い、応募基準もプロアマ、年齢問わず、作品内容も制限なく自由な作品を集めました。選考委員にプロ作家が加わらないこともあり、応募総数2746作品。これまた過去最高応募総数を記録しました。この異例の文学賞の頂点に立ったのが、大賞作「削除ボーイズ0326」(方波見大志/1470円)です。ポプラ社が2000万円を投資した才能とはいったいどんな作品なのでしょうか。
 過去の出来事を削除できる奇妙な装置を手に入れてしまった主人公12歳の直都。彼を取り巻く魅力溢れる登場人物たちと学校生活を楽しく過ごしていました。はじめは半信半疑だったこの装置を、やがて過去の出来事を3分26秒という制限時間の中で削除し始めます。それが決して自分ひとりの過去を削除するだけにとどまらず、その出来事に関係する友人、家族の記憶も変えていくことに気づいていきます。端末を使うのを止める親友をよそに、取り返しもつかない最悪の事件を解決するのにこの装置を使うことにすべてを賭けることに・・・。この作品は結局のところポプラ社の児童書路線を新しい形にして引き継いだヤングアダルトエンターテイメント作品であると思います。
 ちなみに優秀賞の2作品は「アンクレット・タワー」(真田コジマ/1260円)誕生日に母親がアンクレットを買ってくれなかったことを理由に鉄塔に登って泣く少女。ニュースでその映像を見ていた3組のカップルがそれぞ相手との関係性を見つめ直す愛と希望に満ちたストーリー。「ミツメテイタイ」(長谷川安宅/1260円)はペットショップで働きながらあるお客にアルマジロを売ったことをきっかけに避けてきた過去の記憶と向き合う不思議な魅力が漂う喪失と再生の物語。どれも読みやすい作品ですが、子供に「削除ボーイズ0326」女性には「アンクレットタワー」男性には「ミツメテイタイ」をおすすめしたいです。

後日談 この文学賞は現在では行われておりませんし、大賞受賞作家もこれ以降に作品がでていません。ただポプラ社が文芸路線に新たな活路を見出したのは、この賞からだったことは間違いありません。

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削除ボーイズ ポプラ文庫


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