DOOS連載 2006年9月号

作家の数は年々増え続けていますが、作家として多くの方から愛される作家が少なくなっているように思います。新刊を出せば必ずベストセラーになり、お年寄りから若者まで多くの読者の支持を集め、決して期待を裏切らず、魅了し続ける作家。そんな人気と実力を兼ね備えた作家は。現役の作家のなかで該当するのは私が考えるところ3名。村上春樹さん、宮部みゆきさん。そしてもうひとり、昨年の大活躍で大衆作家の仲間入りを果たした東野圭吾さんです。
 東野さんは大阪出身で、関西圏では以前から圧倒的な人気を誇っていました。昨年の「容疑者Xの献身」でこのミステリー大賞、直木賞の2冠を達成。「レイクサイド」は映画に、「白夜行」はドラマになったりと、1年中、書店では東野さんの作品が話題を独占していました。そのおかげでファンが全国に広がり、めったに本屋に足を運ばない人でもミステリー作家の東野圭吾を読むようになりました。
 そして早くも注目の新刊「赤い指」(講談社、1575円)が出版されました。この作品はデビュー作「放課後」から数えて60冊目の記念碑的作品であり、また直木賞受賞後第1作でありながら、約6年ぶりの人気シリーズの復活という、売れる要素が盛り沢山の新刊になっています。
 東野さんの数あるシリーズのなかでも、一番の人気が加賀恭一郎刑事シリーズです。これまで「卒業」「眠りの森」「どちらかが彼女を殺した」「悪意」「私が彼を殺した」「嘘をもうひとつだけ」の6作品で登場する刑事で、もともと1作目の「卒業」では大学生だった加賀が、2作目からは父親と同じ警官として登場。決して派手なところはないですが、謎につつまれた部分をもちあわせながら、犯人を追い詰める渋い刑事です。シリーズが進むにつれて、加賀刑事も成長していく様を読むことができます。7作目の新刊では、ある事件にかかわった家族とそれを追う加賀刑事自身の家族の物語とが、二重構造となって展開する人間ドラマ。加賀刑事の「刑事というものは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのように解明するかということも大切なんだ」という台詞にこの物語のすべてが表れています。これまでの最高傑作と呼び声が高い「容疑者xの献身」は男女の愛を描いています。家族の愛を描いた本書がさらに上をゆく最高傑作だと思います。きっちり最後は泣かせますし、史上初の2年連続このミステリーがすごい大賞が見えてきました。

後日談 2年連続のこのミス大賞とはなりませんでしたが、加賀恭一郎シリーズは8年たった現在でも、「新参者」「麒麟の翼」「祈りの幕が下りる時」と続き、東野圭吾を代表する長期人気シリーズ。映像化も多く、まさに大衆作家の冠は間違えではありませんでした。この年から、東野圭吾はさらに大きく飛躍していくことになるのです。
32275894[1]
赤い指 講談社文庫 


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