黛家の兄弟

 「高瀬庄左衛門御留書」は、2021年代表する時代小説であることは間違いない。各紙の書評あるいは各賞受賞と、多くの読者から支持を得た。私も昨年読了したとはいえ、まだ記憶に新しい。いや、記憶に新しいどころか、感動の余韻がいまでも残っている。注目作家となった砂原浩太朗氏が早くも2作目を刊行した。何よりもまず心の高揚が抑えられなかったのが、1作目に続き、神山藩の物語であるということ。つまり、神山藩がシリーズとして続いていくことへの喜びがある。やはり、時代小説は、単発よりも、シリーズを望む。それも優れた作品であれば、なおのことである。時代小説の読者なら、現在進行形で、数々の藩と主人公たちが、心の中で生きている。そこに、あの庄左衛門たちがいる神山藩が加わる。2作目には、1作目に登場した人物が出てくるのだが、それも予想しない形で不意打ちのような登場は、前作の記憶を呼び覚ましてくれる。時代小説に限らず、シリーズものを読むときの楽しみのひとつである。
 ただ、本編は、同じ神山藩ではあるが、1作目とは違う黛家の3兄弟の物語となる。家督を継ぐ長男、大目付の黒沢家に婿入りする三男。そして次男は・・。悪友たちと女郎へ出入りする。黛家のライバルとなる漆原家の嫡男との因縁が、やがて、最悪の事態を招く。次男を案じる兄弟たちと、思わぬ形で合いまみえる。憎しみ合わずとも、3兄弟には、それぞれの試練が立ちはだかる。とかく、裁きを業とするようになった三男には、大きな決断を迫られる。若き日から、晩年にいたるまでのこの黛家の兄弟の辿る道は、決して平端ではない。若き藩士がたくましくも成長していく姿に引き込まれながらも、本篇に通底する「生きる切なさ」に、私は幾度も涙を拭った。再び多くの読者を得て、圧倒的な支持される(売れる)シリーズ作品になることを願う。

講談社 黛家の兄弟 砂原浩太朗


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